春は出会いと別れの季節

 3月某日、明け方に家に戻ると同居人の荷物がなく、部屋はきれいに掃除してあった。出て行ったのだ。LINEもどうやらブロックされているようだった。
 ナンパで知り合い、ストーカーが怖いというから家に招いて二カ月。妹みたいな存在として気に掛けていたけど、なんの連絡もなく去っていった。痕跡はないかと探していると書きかけの手紙がみつかった。「これから家族3人で楽しい生活を送ろうね」。知らない男に宛てたもので、実は同居人は妊娠していたらしい。
 妊娠一カ月という記述があった。最近書いた手紙だとしたら俺の家に転がり込んだ後に妊娠したことになる。誰か男がいるかもなあぐらいには感じていたけど、まさか子どもができていたとは。全く気付かなかった。これから新しい生活を送るからこそ、俺みたいなうさんくさい男との関係をきれいさっぱり清算したかったのだろうか。あるいは、手紙はもっと前に書かれたものかもしれず、そうすると俺の子どもという可能性もある。会ったばかりの女と生でセックスするなんて恐ろしいことはしないからありえないけど。
  今まで何かと苦労をしてきた子で、支えになれたらと願ったけど、よき相談相手にはなれなかった。後半はほとんど会話もなかった。
 真剣に向き合うのが怖かった。妹みたいなものだと思い込もうとしていたが、オンリーワンの症状は出ていたし、ナンパ師として死なないために心を通い合わせることを避けていた。相手のことをよく知ろうともしないで、もっと頼ってよと求めるのはわがままだ。
 たまたまタイミングが合ってほんの一瞬だけ交わった。だからこそキレイに別れたかったけど、力が足りなかった。後戻りはできないし、まんこに空けられた穴はまんこで埋めるしかない。